2017年度日本経営品質賞 中小企業部門
万協製薬株式会社
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万協製薬株式会社は医薬品から化粧品までスキンケア分野の受託製造ビジネスモデルにより経営革新を行い、2009年に日本経営品質賞を受賞している。その際には、スキンケア分野で、医薬品並みの品質で化粧品を製造することが大きな強みになっていた。しかしその後、医薬品の国際的な供給化や国内薬事法厳格化といった環境変化により中小の製薬会社が苦境に立つ中で、同社は一般用医薬品・医療用医薬品を主とする事業スタイルへと変革を進める。その結果、前回受賞時2009年には売上高15.7億円、人員88名、2工場だったものが、2016年は売上高32.5億円、人員167名、3工場へとほぼ2倍に事業規模を拡大している。その間、受託製造品や自主開発品は微増で、大きく伸ばしたのは共同開発の医薬品、特に一般医薬品(OTC; Over The Counter)で、1.7億円から8.5億円へと売上高を5倍に伸ばしている。いまや売上高の90%を医薬品(残りの10%が化粧品)が占めるまでになり、事業スタイルを変革している。
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これは、同社が、顧客との共同開発からその製造(調合・充填・包装)までを一貫して担当することで、顧客の要望を幅広く実現することに成功したことを意味している。ここでいう開発とは、創薬のことではなく、薬剤の改良や製造技術、使用形状、容器等の開発といった商品開発のことである。同社は、開発および製造(調合・充填・包装)をすべて自社内で行い、開発や製造、品質管理の実働部隊が直接お客様に対応する全社営業で、外用薬に特化した知見の蓄積を生かして、たとえば、薬剤増量化といった顧客製品企画を製造工程のコストダウンで吸収し実現するという柔軟な問題解決発想、各社ごとに違う生産希望時期をフォーキャストで管理、様々な設備を直結できるように改造、さらに絶えず改良し続ける改善活動が恒常化している。その結果2016年には年間62品目の新製品を販売可能(許可・承認)にし(外用薬競合他社は数品目〜10品目程度)、重要顧客からパートナー評価1位と評価されている。
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もう一つの要因はPIC/S GMP対応である。医薬品等については、各国が品質管理基準GMP (Good Manufacturing Practice)を定めていて、日本ではGMP省令(J-GMP)と呼ばれる。これに対してGMPの世界標準を目指して、国家代表者会議であるPharmaceutical Inspection Convention (PIC)と 当局機関の組織であるPharmaceutical Inspection Co-operation Scheme (PICS)の統合グループ(PIC/S)が定めたPIC/S GMPがある。GMP省令と比べPICS GMPは適用範囲が流通等を含んでいて広く、管理が厳密(不適合品の隔離、作業や情報管理の妥当性確認等)で、経営者の経営責任などが求められている。日本は2014年にPIC/S GMPに加盟したが(同年で加盟43カ国)、まだガイドラインで、国内ではGMP省令を法的適用している。しかし同社は、一般用医薬品・医療用医薬品に軸足を移す際に、国際的な顧客要求に応えるべくPIC/S GMP対応の社内体制を整えた。PIC/S GMPは顧客と社内の共通言語となり、コンペや監査の際の顧客対話で得た顧客ニーズの先取り投資で2014年にはPIC/S GMP対応のステロイド製剤専用工場(第3工場)を作り、それが製造仕様化の高い能力とともに、海外大手製薬企業からも認められて、大量受注につながった。
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こうしたことを可能にしたのは、同社が人の成長こそ会社の使命と考え、11年かけて行ってきた経営品質の考えに基づいた人と組織作りの実践だった。例えば同社では、2009年頃から、現場のものづくり視点で各工程や業務の中で作業として一区切りにできる作業単位を「モジュール」と呼び、その内容をモジュール作業手順書(SOP)として規定・管理している。逸脱や不具合があればGMP課(PIC/S GMPの推進部門)立ち合いで、SOPを検証・修正し、教育や適用がされるというPDCAが回っている。このモジュールを使って、各モジュールで見習いから指導者までのレベル分けと点数化を行い、モジュール講習会等でレベル向上が図られる。各モジュールの習得は他工程の応援を可能にするだけでなく、充填⇔包装間といった課を超えたジョブ・ローテーションも可能にし、2008年には29.8%だったジョブ・ローテーション率が、2016年には40.2%に向上している。こうして、モジュールは個人の目標やキャリア・パスにも活用され、また社員同士が業務をシェアできるようになったことで、子育てや家庭事情への対応も可能になり、各人のやりがいとワーク・ライフ・バランスに配慮した安心感と組織への信頼感を高めている。
またプチコミファミリー制度などの部署や業務を超えた交流の場や、各種のリーダー制度や女性役職者の登用により、垣根のない多様な対話と相互学習が進み、ジョブ・ローテーションによる人員配置の適正化、複雑で高度な製薬作業の維持といった運用ができている。このような人づくりと組織づくりを通して更に社員の思考と行動の質が高まり、組織自らが学習を進めるという好循環を生んでおり、これがPIC/S GMPによる品質向上や全社として顧客ニーズに柔軟に対応する共創型の開発・製造の実現の源泉となっている。
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国際分業が進み国際的な要求やルールによる制約を受ける中でも大手顧客と対等な関係でものづくりを行い、事業を成長させてきた同社の長年の取り組みは、同様な状況にある中小企業にとって希望となり有効なプラクティスとなりえると考える。
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【沿革・事業内容】
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●業種 スキンケア製品の開発・製造・販売(自社開発・OEM・共同開発)
●設立 1960年3月
●代表者 代表取締役社長 代表取締役社長 松浦信男
●本社所在地 三重県多気郡多気町
●事業拠点 本社、支社1カ所、工場国内4カ所(2017年11月現在)
●資本金 40百万円
●売上高 3,249百万円(2016年度)
●従業員 167名(2017年11月現在、派遣・パートを含む)
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万協製薬株式会社は、人体用の主に医薬品のジャンルで、日本国内を中心に顧客先ブランドの外用薬の開発・製造・輸出・販売を行う製薬会社です。本年で創業57年を迎えました。
現在の弊社の事業コンセプトは、「万協製薬独自のGMPメディカルスキンケアソリューションサービス経営(以下、GSS経営)を通じて、おもに医薬品における外用薬のジャンルで、高い効き目と品質を持つ安全な製品の開発と製造によって、顧客と社員と社会から必要とされるスキンケア アウトソーシング サービス企業を目指す。」というものです。
GSS経営の言葉の意味とは、弊社と顧客とビジネスパートナーとが、おもに医薬品の分野で、年々高度化する法規制を遵守しつつ、機能性の高いスキンケア商品専門の企画・開発・製造・販売を共に行うことで、最終顧客である、患者様の抱えている問題を共に解決するサービスを提供する、という意味です。
現在、国内外90社の顧客に対して300品目の製品を提供しています。弊社は、会社、顧客、社員、ビジネスパートナーの「四方よし」の考え方を持つことで問題を解決しようという考え方を持っています。このGSS経営の事業コンセプトは弊社の社員全員の共通した思いとなっています。
この10年、世界の製薬業をめぐる状況は、激変しました。グローバル化によって世界統一されたルールと、度重なる薬事法改正のため、年々行政からの規制が厳しくなっています。そのなかで、弊社は、事業領域を皮膚科領域に特化した日本でも数少ない会社です。外用薬の市場は、全体市場のわずか6%であり、大手製薬メーカーにとって市場規模が小さいため、参入することが少ないため、この市場のニッチさこそが、弊社が中小企業として皮膚科を事業領域に特化している理由です。皮膚科の疾病は、命にかかわることは少ないですがその反面、症状が外皮であるため、効果が顧客から目に見えやすいため、内服薬よりも顧客は製品の効果に高い期待を持っています。今後も弊社は、顧客使用感や機能性や有効性、安全性のあるスキンケア製品を提供していきます。
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<経営品質向上活動への取り組み>
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弊社は、2003年より経営品質向上プログラムの取り組みを、社長を中心として全社を挙げて開始しました。弊社は「顧客の要求のより深い理解CS」と「従業員の働き手満足ES」の両方を同時に追求することが絶え間ない経営革新活動に繋がると考え現在まで、14年間絶えることなく年次アセスメントを続けています。2005年度には三重県経営品質賞の奨励賞を、2007年度には三重県経営品質賞の優秀賞を、2008年度には最高賞の県知事賞を受賞し2009年度には日本経営品質賞を受賞することができました。2012年にホールディングカンパニー制に移行した後は、激変する事業環境の中で経営品質向上活動を事業の中心的仕組みとし続けることで、弊社はグループ企業の中核として中心的役割を担っています。
現在は社員それぞれが自主的に活動を継続することで、エンパワーメント経営がそれぞれの部署で行われており、社員が自主的に経営的視点を持った業務革新を日々行っています。日本において製造業で、これほど長期間にわたって経営品質向上活動を続けている企業はまれであり、今回の受賞を契機としてさらにこの活動の普及を社会に広げていきたいと考えています。
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本件お問い合わせ先
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〒519-2179 三重県多気郡多気町仁田725-1 万協製薬株式会社
TEL:0598-30-5266 FAX:0598-30-5285 E-Mail:postmaster@bankyo.com
(担当:本社総務部 野呂・深水)
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